全員が悲しみを表に出す訳では無い

私は親戚がそれほど多くないので、葬儀に参加することは大人になった今でもそれほどありません。
それは良いのですが、一つ不思議なことがあります。
葬儀は亡くなった人を見送るわけですから、みんな悲しいはずなのです。

確かに、最後の挨拶をするときなどは泣いていたり、泣くのを我慢している人がたくさんいます。
また、泣きそうなのか、必死で顔を伏せている人もいます。
それが普通のことだと、私は思うのです。

ですが、火葬場で時間が空き、みんなで昼食を摂っているときは、みんな不思議と沈んでいないのです。
むしろ晴れやかというか、ニコニコ笑っている人が結構いるのです。
沈んでいた人も美味しいものを食べて笑顔になったりして、なんだか不思議な光景だなと思います。
火葬場にはもちろん、私たち以外にも他のたくさんの遺族や知り合いももいるわけですが、みなさん沈んでいるかというと、そういう人は意外と少ないのです。

忙しいからなのか、人前だからかは分かりません。
大人になった今でもよく分かっていないのが現実です。

私は鈍いのかなとも思ってしまうのですが、でも、もしかしたらまだそこまでその人の死が現実味を帯びていないのかもしれません。
葬儀というのは終わるまで本当に忙しくて、人の死を悲しむ暇が意外とありません。

終わった後それぞれ悲しむのかもしれませんが、葬儀で思いっきり悲しむというのは、意外と出来ないことなのかもしれません。
母が、「誰かが思いっきり悲しんだり大泣きしていると、かえって冷めるんだよね」と言っていました。

それはなんとなく分かる気がします。
きっとみんな、狂おしいほどに悲しい気持ちを押し殺しているのかもしれません。
そんな我慢をしていると思うと、なんだか人間って愛しいなと思ってしまう自分がいます。